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システム容量5倍を処理 : SBペイメントサービスが挑む、決済サービスを「止めない仕組み」とは

SB Payment logo black background

国内トップクラスの決済サービス事業を提供し、日常のあらゆる決済シーンを支えるSBペイメントサービス。個人ユーザーにとっては「止まらないことが当たり前」、加盟店にとっては「信頼の基盤」となる存在です。一方で、ファンクラブ開設や大型キャンペーン時には、システム容量を大きく超えるアクセスが集中し、プラットフォーム全体の安定性が課題となっていました。インフラ増強に頼らず、システム容量の5倍を超えるトラフィックにどう対応したのか。Queue-itを活用して実現した「決済サービスを止めない仕組み」と、その導入効果について伺いました。

80%

1億円以上の追加見込み投資と比較した費用削減

5倍+

システム増強なしで処理できたトラフィック量の対容量比

決済サービスおよび決済代行事業において国内トップレベルのシェアを誇るSBペイメントサービス。ソフトバンクのキャリア決済「ソフトバンクまとめて支払い」や、VISAプリペイドカード「ソフトバンクカード」も展開し、多くのユーザーが日常的に利用しています。

同社のデジタル基盤の中核を担うのはシステム運用統制部。開発基盤の整備から運用、監視の効率化まで、幅広い領域をカバーしています。

プロジェクト推進課課長を務める木村大地氏は、働くやりがいについてこう語ります。「決済システムは社会インフラのような役割で、動いていて当たり前。エンドユーザーから感謝されることはほとんどありません。ですが、例えばトラフィックのバースト対策を入れたとき、SNSで『すんなり買えるようになった』といった反応を見ると、自分の仕事が確かにユーザーの体験を支えていることを実感できます。」

サービス拡大に伴い、極端なアクセス集中が発生する加盟店との取引も増える中、「ピーク時のシステムの負荷を軽減し、常に安定したサービスを提供するか」が同チームの大きな焦点だったと言います。

この対策として木村氏が選んだのがQueue-it。今回は、その決断の背景や、どのように決済業界にありがちな課題を仮想待合室で解決しているのかについて伺いました。

ファンクラブ開設時のアクセス集中による他加盟店への影響

同社が直面するアクセス集中のきっかけはさまざまです。例えば、人気プラモデルの発売、アーティストのファンクラブ新規開設、ふるさと納税の駆け込み、飲食チェーンのクリスマス商品券発売時などが挙げられます。

中でも、ファンクラブ開設時のアクセス集中は著しく、特定の加盟店によるトラフィックバーストが他の加盟店にまで影響を及ぼしてしまうこともあったと言います。木村氏は当時の状況をこう振り返ります。

「ロードバランサーでファンクラブの加盟店を隔離する流量制御を実装していましたが、流入が性能上限を大きく上回り、制御不能となってしまいました。その結果、数時間にわたってサービス全体が不安定な状況が続いてしまいました。」

また、SBペイメントサービスでは、多くの決済事業者同様、セキュリティや法規制の理由からコアシステムの多くをオンプレミス環境で運用しています。規制の厳しい分野では不可欠な構成ですが、こうしたアーキテクチャは、特に一時的で極端なアクセス集中に対応する際には、拡張が難しく、高コストになるという課題があります。

「決済サービスは、加盟店様の事業への信頼に直結します。また、販売やキャンペーンを楽しみにしているユーザーの皆様にも、不快な思いをさせてしまいます。そのため、解決策を探すことが喫緊の課題でした。」

効率的なシステム保守とユーザー体験保護を両立するソリューション

ロードバランサーやレート制御、スケーリングなど従来の手法を試した結果、木村氏は、「流入そのものをコントロールできなければサービスを守れないことを痛感した」と言います。それに加え、コストの効率化と顧客体験の担保を両立できるソリューション、という観点でリサーチしていたところ、Queue-itがぴったり当てはまったと言います。

「Queue-itについては、日本でサービスを展開し始めた頃から知っていました。以降導入ブランドが増え、信頼性を実感していました」と木村氏。

 「予測不可能なピークに合わせた設備投資はコスト、運用効率が悪く、現実的ではありません。また、決済システムはクレジットカード会社をはじめ多数の決済機関と接続しており、キャパシティ拡張が柔軟にはできない部分があります。」

「こうした制約がある中、Queue-itを入り口部分に配置してトラフィックを制御するのは大変理にかなっていると思いました。ユーザー体験を損なうことなく、システムを効率的に守れる優れものだと感じましたね。」

システム本部 システム運用統制部 プロジェクト推進課課長 木村 大地氏

システム本部 システム運用統制部 プロジェクト推進課課長 木村 大地氏

木村氏は待合室を決済ゲートウェイ入り口部分に、セーフティネットとして実装することを決意。こうすることで、特定のイベントを対象に、閾値以上のトラフィックが発生した時にのみ待合室が自動発動するため、その他の加盟店のユーザーは影響を受けることなく決済を行えるからです。

インフラ拡張なしで通常の5倍の容量を処理

Queue-it導入後、最初に挑んだファンクラブ開設では、オープンと同時に数千人が待合室に流れ込んだにも関わらず、トラブルなく運用することができたと言います。ファンは一旦待合室へ案内され、待ち時間などの情報を見ながら待機。順番が来ると、順次決済処理に案内する、というフローを確立し、スムーズに運用できました。

SB Payment Service queue page

SBペイメントサービスの待合室画面

「従来の流量制御では、上限超過する場合はソーリーページを表示してユーザーに再操作をお願いすることしかできませんでした。購入を阻害しユーザーおよび加盟店に迷惑をかけているというプレッシャーを感じることが多かったです」と木村氏。

 

 しかし、Queue-it導入により、「システムを増強することなくキャパシティの5倍以上のユーザー流入を受け入れることができた」と言います。

「システムを増強するとしたら、サーバー、データベース、ネットワークをはじめ、決済機関との接続など、増強箇所は多岐にわたり、少なくとも1億円以上の追加投資が必要となる見込みでした。Queue-it導入により、追加投資と比較して8割費用を削減することができました。」

システム本部 システム運用統制部 プロジェクト推進課課長 木村 大地氏

システム本部 システム運用統制部 プロジェクト推進課課長 木村 大地氏

待合室を使うことでユーザー体験が大幅に改善したとも言います。「待合室を導入後は、ユーザーからのポジティブな声がSNS上でも見られるようになり、楽しみながら待ってくれているんだな、ということを実感しました。ユーザーはエラー画面やレスポンス遅延に対しては怒りますが、ちゃんとした待合室画面が出ていれば、むしろ楽しみながら待ってくれるというのが面白かったですね。」

また、チームの働き方や、トラフィックピークの捉え方にも変化があったと言います。

「万が一に備えて広範囲に監視体制を取っていたこれまでとは打って変わって、Queue-itによる安定したトラフィック制御によって、体制の最適化と心理的な負担の軽減が実現しました。その結果、創出された運用上の余力を、改善施策の検討や将来を見据えた基盤整備など、より付加価値の高い業務に活用できるようになっています。」

システム本部 システム運用統制部 プロジェクト推進課課長 木村 大地氏

システム本部 システム運用統制部 プロジェクト推進課課長 木村 大地氏

「これまでは『来たリクエストをすべてさばける準備をしておかなければいけない』と意気込んでいたのですが、適正な待ち時間の範囲内で安定的に処理できれば良いのだな、と考えられるようになりました。」

同社は、ファンクラブ新規開設に加えて、テレビ番組連動のキャッシュレス募金でもQueue-itを利用しています。こうした事例から、社内で他の加盟店にも提供したいという要望が多くあがっていると言います。

Traffic volume of a campaign handled by SB Payment Service

某大型キャンペーン時のトラフィックの推移(数値は非表示にしています)

「止めない仕組み」から「加盟店の成長を支える基盤へ」

Queue-itによる入口制御でトラフィックピーク対策が大きく前進したという木村氏。最後に、さらなる挑戦への意気込みを語りました。

「多くの決済サービス会社が、待ち時間なくリアルタイムで処理できるシステムに高額な費用を費やしています。ですが、Queue-itとの協業によって、信頼出来るユーザー体験を構築する方が高速であることよりも重要であること、そしてユーザーは、きちんと情報を提供すれば安心して待ってくれることに気づきました。」

「今後もQueue-itとの協業をはじめとして、次なる成長基盤づくりに挑戦していきたいです。サービスの根幹を支え、ユーザーと加盟店の両方に価値を届けていきます。」

最後に木村氏は、同じ悩みを持つシステム担当者へのメッセージとしてこう語りました。「ぜひ仮想待合室の活用を広めて、待ち時間に対する価値観を変え、我々システム担当者がキャパシティ管理で疲弊しない世界にしていきましょう!」

 

インフラ増強に頼らない、安定したシステム運用へ